HMGセミナー 第4章:細胞と細胞間情報伝達(前半)

標準

担当:南谷
参加者12人
教科書:ヒトの分子遺伝学

節の概要:
細胞の構造と多様性について
細胞接着と組織形成について
細胞のシグナル伝達の原理について

議論点:
>C値と生物の複雑さは関係がないとすると、生物の複雑さはどのように定義するのか?
>ゲノムの大きさは何を意味するのか?
ー どうしても生物の複雑さをヒトは形の大きさで判断してしまう。
ー アメーバ >> 人間なのは例外なのではないか?
ー C値が多くても意味のある遺伝子が多いわけではない。複製されたものが多数ある場合  もある
ー 一般的に、細胞・組織・臓器の種類で決まるのではないか。
ー 飛行機と冷蔵庫で考えた場合、みな飛行機の方が複雑だと思っている。そして実際部  品の数(C値)で言えば、飛行機の方が圧倒的におおい。
ー レゴブロックを例で考えると、限られた種類の部品(遺伝子)で大きいものを作れ   る。つまり構造はシンプルだが、使用する部品数(C値)はその場合多くなる。

その他の議論点
ー単細胞生物はなぜ核を持たないのか?
ーニューロンの大規模処理
ーニューロンの種類の影響
ー生活環のほとんどの期間は単細胞生物であるが多細胞生物になる時期もある。そのメリットは?
ー最初の細胞の直径の子孫は生きた状態で見つかるのか?
ー細胞が組織を形成するときに、それぞれの細胞はどうやって、位置を決めているのか?
ー細胞マトリックスの大きさ
ーミトコンドリアないでの合成されるタンパク質は何か?
ー細胞の種類が分かれるのは、遺伝的かそれともほかの細胞との兼ね合いによるものなのか?
ー細胞内に比べて細胞外マトリックスにはどのような難点があるのか?

まとめ
生物の複雑さの定義について、身近なものを例にしたりして議論しました。

HMGセミナー 第3章:家系と集団における遺伝子(前半)

標準

担当:小澤和也
参加者:14名
教科書:ヒトの分子遺伝学
節の概要:
<3.1節> 遺伝的形質の分類について、主に関与している座位数の観点から述べられている
<3.2節> メンデル遺伝形質が作る基本的なメンデル家系パターンについて述べられている
議論点:
>Y染色体が消滅した後どうなるか? また、どうすれば回避することができるか?
– XY性染色体をもつ全ての生物に起こりうるのか?
 → メダカは、3つしか存在しない
 - 1つ以上あれば性決定に問題はなさそう
 → トラフグは、XとYの差が1塩基のみで、一度Y染色体が消滅した後に復活した
  - ヒトにも同様のことが起きてもおかしくない
– Y染色体の発達した生物に特徴はあるのか?
 → ヒト以外の生物は優秀な遺伝子を持った雄が多くの雌と交尾
  - (多くの地域で)一夫一婦制であるヒトのみが消滅するのでは?
  - また、同様にヒトも優れた個体のみ子孫を残せば回避できるのでは?
   - 個体を選別するのに、どのような指標があるのか
 ⇔ そもそも、Y染色体が雄の優劣を決める要因になり得るのか
– Y染色体の劣化による男性不妊の影響は?
 - 類人猿との比較で分かりそう
>ミトコンドリアから核に対してどのように影響を与えるか
– 以前は、核とミトコンドリアは共生したのではないか
 - 元々、ミトコンドリアは独立した生物だったのではないか?
– ミトコンドリアを全てのぞいてみて、その後の影響を見てみれば分かるのではないか
 - 真核生物に対してなら実験ができそう
⇔ 植物において、葉緑体はどうか
 - 種によっては、存在しないものがある → 同様にミトコンドリアをなくすことが可能では?
– ミトコンドリアと核では、それぞれのコドン表に違いがありそう
 - ミトコンドリアが核とは別に独立しているのは何故か、という論点につながりそう
その他の議論点:
>性染色体について
不活性化するのにも関わらず、X染色体は何故2本必要なのか
今後、Y染色体に重要なコードが生まれるか
何故X染色体に重要な遺伝子がまとまっているのか
何故染色体による性選択システムは、X・Yの2種による複雑なものになったのか
ヘミ接合体における問題
>ミトコンドリアについて
ミトコンドリアボトルネック時の遺伝子の選択方法について
ミトコンドリアが核とは別に独立しているのは何故か
ミトコンドリアに変異がおきやすい理由について
>その他
ポリジーンの取り扱う座位について
優劣性が遺伝子の発言にどのように影響を与えるかについて
共優性の遺伝子の特徴について
まとめ:
どちらの議論でも、ヒト以外の生物の実例から意見が広がっていきました。実例があることから、ヒトも例に漏れずY染色体やミトコンドリアが消滅することも有り得ないのではないか、という意見がありました。

お花見しましたよ

標準

2013年度最初?の大きなイベントは
お花見でしたー。

はいっと

きれいですねー

みなさんいろんなものを持ち込んでくれましたよ!!

すごく天気がいいように見せかけて実はかなり寒かったです!!!!


ほら、みなさん寒そーにしてます。
実際体感温度は5度以下でした。

が、まだうちのボスの木下先生がきておらずこのまま終える訳にはいかない。。。

まってまって、よーやく用事を終えた木下先生がきてみんなでパシャリ。

はいこちら

最後に中村さんが得意の能でしめてくれましたとさ。パチパチ

イケメンでした

開催日:2013.04.19
場所 :片平キャンパス

写真提供:大林さん
文責:B4南谷

HMGセミナー 第2章:染色体の構造と機能(前半)

標準

担当:寺嶋友美
参加者:15名
教科書:ヒトの分子遺伝学
節の概要:
<2.1節>細胞の倍数性と細胞周期(主にM期)について述べられている
<2.2節>体細胞分裂と減数分裂について解説し、両者の違いが比較されている
<2.3節>染色体の構造と、染色体の複製に必要なセントロメア、複製起点、テロメアの3つの要素について述べられている
議論点:
植物や魚では3倍体以上でも生存できるのに、なぜ哺乳類はできないのか。
-鳥類は?
 -ニワトリは2倍体
-分裂するときに異常が起こらないのはなぜか?
 -奇数倍よりは偶数倍の方が減数分裂のときに問題は少ない
  -奇数倍は増えれない
   -園芸用の植物等で多いのは(減数分裂を行わない)球根でも増えることができるから?
   -例:種無しスイカ、全身トロのニジマス(♀)
-3倍体や4倍体の生物は全ての細胞が3倍体や4倍体なのか?
 -トマト等は全部同じ倍数性
 -4倍体は巨大化する
  -例:カエル等
-増えた分の染色体は細胞内で不活性化している?
 -ヘテロクロマチンが活性化しても、似たような状況になる?
  -遺伝子の発現量が変わるという意味では同じ?
   -全体的に増えるのと今まで発現しなかったものが発現するのではだいぶ違う?
   -発現量とその影響は非線形の関係なので、3倍体以上はそのストレスに耐える必要がある
-一部人間でも3倍体以上ができる
 -核が1つになる訳ではなく分かれてる
  -一つの核の中に染色体が何倍かあるよりは問題ない?
 -これは分裂できる?
  -多核体になった時点で分裂しなくなる
その他の議論点:
<細胞分裂>
・紡錘体の微小管がセントロメアに結合するときの制御について。
・分裂の際に何故核を壊してから染色体を複製し、娘細胞でまた再形成するのか。
・どのようにして全ての染色体が複製を終わった事を感知して、分裂を制御しているのか。
<性染色体>
・性染色体のXとYの長さが違う理由はなにか。
・性染色体の遺伝子は特別な機能を持っているのか。
<減数分裂>
・減数分裂の際に、何故卵子は非対称で精子は対称に分裂するのか。(減数分裂の際に卵子は1つの卵母細胞から1つできるのに対し、精子は1つの精母細胞から4つできる)
・減数分裂はなぜ一度増やしてから分裂するのか。
<遺伝>
・受け継ぎやすい配列があるかどうか。
・全ての遺伝子が両親のどちらか一方だけになることはあり得るのか。
・組換えはどのくらい起こっているものなのか。
・キアズマ(組換えが起こった位置)が無かったり少なかったりするとどうなるのか。
<染色体の構造>
・クロマチン構造をとらずに凝縮できるのか。
・ヘテロクロマチンが活性化された時の影響について。
まとめ:
ヒトと他の生物の倍数性の違いについて、他の生物との比較からヒトでも起こりうる事象まで様々な意見が出ていました。

HMGセミナー 第2章:染色体の構造と機能(後半)

標準

担当:藤原脩
参加者:16名
教科書:ヒトの分子遺伝学

節の概要:
<2.4節>ヒトの染色体に着目し、染色体の染色方法とそれを利用した解析について述べられている。
<2.5節>染色体の数的異常・構造異常とそれが身体におよぼす医学的な影響について述べられている。

議論点:
・ヒトについて、染色体数が2n(46本)の卵子から個体ができないのはなぜか
 - 染色体2nの卵子から分裂は可能だが奇形となる
 - 下等生物(アブラムシ,ミジンコ)はクローンをつくる(卵子からかはわからない)
  - クローンでは遺伝的多様性は期待できない
  - 通常は無性生殖だが、越冬時には有性生殖を行う
  ➡ ヒトにとっては有性生殖がとくに重要?
 - ゲノムインプリンティングがおよぼす影響が強い?
  ※ ゲノムインプリンティング = ゲノム刷り込み;遺伝的転写調節。父親と母親のどちらから受け継いだ遺伝子かという情報が記録されていること

・トランスジェンダーと性染色体に関係はあるか
 - 仮説として
  - 男性(XY染色体をもつヒト)の場合、Y染色体の不活化により女性だと性自認する?
  - 女性(XX染色体をもつヒト)の場合、X染色体がY染色体の役割を担うことで男性だと性自認する?
 - テストステロンに着目して
  ※ テストステロン = 男性ホルモンの一種。胎内で大量のテストステロンに曝された胎児が男性となるらしい(アンドロゲン・シャワー)
  - テストステロンを作れない場合
  ➡ Y染色体(テストステロンの調節系)の異常と常染色体(テストステロンの合成系)の異常の両方が考えられる
  - テストステロンを受容できない場合
  ➡ 性染色体だけでなく常染色体も受容するので、性染色体のみが関係しているとは断言できない

そのほかの議論点:
<染色体異常>
21番染色体のトリソミーだけが生存可能なのはなぜ(13, 18番染色体のトリソミーはある期間だけ生存可能で、ほかの染色体のトリソミーは生存不可能)
性染色体の増加では問題が起こらないのはなぜ(スーパー女性など。X染色体のモノソミーはターナー症候群を引き起こす)
13, 18, 21番染色体以外のトリソミーがある場合にはどれくらい成長できるのか
モザイク型(一部の細胞でのみ現れる)の染色体異常について、異常染色体が正常染色体へ変わることはないのか

<染色体全般>
染色体の種類によってセントロメアの位置が異なるのはなぜ
染色体の組み替えが必要なのはなぜ
サイズとセントロメアの位置による染色体の分類(P51, 表2.3)と含まれる遺伝子の機能に関係はあるか

染色体の修復に関するチェック機構はなぜないのか
染色体の修復のトリガーとなりうる要素は何か
染色体の逆位のメカニズム
1つの個体に複数の遺伝的系統を含むことが許されるのはなぜ
均衡型相互転座について、ヒトで種の分化は起こらないのか
ハイブリダイゼーションについて、プローブが長いとより選択的にDNAを検出できるというのは本当か

まとめ:
セミナー前半の内容も含めて、ヒトとそれ以外の生物との違いを、染色体を通して考えるきっかけになったかと思います。

HMGセミナー1章:核酸の構造と遺伝子発現 (後半)

標準

担当:城田松之
参加者:18名



第1章の後半ではRNAのスプライシングを含む転写後の調節,タンパク質の翻訳・翻訳後修飾が取り上げられています.

議論した点

翻訳後修飾するぐらいならアミノ酸を増やしたらいいのではないのか?

生物はアミノ酸の種類を20種類に制限する一方で,翻訳後のアミノ酸を修飾することで要素の多様性を生み出しているように見える.この戦略にどのような利点があるのかを議論した.

進化上の制約

大昔に遺伝暗号が決まって,その後高等生物になるに従っていろいろな機能的要請に応えるために翻訳後修飾の機構ができたのでは.
翻訳後修飾は種によって違いがあるのか?
大腸菌では翻訳後修飾がないので,ヒトの遺伝子を導入して発現させても機能がなかったりする.

アミノ酸のバリエーションを豊かにするため

アミノ酸数×修飾で乗数的に種類が増える
コードするアミノ酸の種類を増やすだけでは加算的にしか増えない.

修飾アミノ酸がシグナルになっている(環境要因への応答の制御)

リン酸化が増殖などのシグナルを伝える
糖鎖は細胞外分泌蛋白質につけられる
ゴルジ体で修飾が起こる.
蛋白質の細胞内でのソーティング(決まった場所への輸送)に関与している
同じような機能は蛋白質のN末端のシグナル配列も持っている.
修飾するかどうかはどこに書かれているのか?

イントロンの認識部位は精度よく予測できるのか?

スプライシングサイトの認識配列は短いため,これだけで正しく決定できるかについて議論した.

疑問点

ゲノム配列上からスプライシング部位のコンセンサスとして知られている配列をピックアップした時にどのくらい真のスプライスサイトとして当るのだろうか.
擬陽性がたくさんできてくる可能性

推測

教科書に書かれているルールの他にも認識配列があるのではないか.
配列上の特徴から一意に決まるというよりも確率的に決まっているのではないか.
実際,臓器特異的なスプライシングバリアントがあるように,スプライシングの有無は変化する現象である.

その他の議論点

イントロンとRNAスプライシング

イントロンがなかったらどうなるか,役割は?
イントロンには変異が入ってよいのか?
イントロンとは何か?
スプライシングの2種類のコンセンサス配列の違いは何か?
長い遺伝子でほとんどイントロンでよいのか?スプライシングできるのだろうか?
スプライシングバリアントと立体構造の関係はあるのか?
翻訳後修飾でメチオニンがとれるものととれないものの違いは?
イントロンがあると複製時にエキソンにエラーが入る率を下げられるのか?

遺伝暗号について

ミトコンドリアの遺伝暗号が違うのはなぜか?
遺伝暗号はなぜ今のようなものにあったのか?
コドンへの環境要因をリボソームはどうやって判断しているのか

その他

蛋白質構造についてもっとよく知りたい
Cap構造が高エネルギー結合をしているのはなぜか?

まとめ

 真核生物ではRNAやタンパク質は転写・翻訳されたままの状態で使われるのではなく,様々な修飾を受けます.この点がセミナー参加者の興味を引きつけたようでした.特に,RNAスプライシングの機構にはたくさんの議論点が挙げられました.時間の都合上議論しきれなかったのが残念です.
一方,タンパク質の修飾については進化上の制約や機能の多様性の観点から利点がありそうだという方向にまとまりました.

HMGセミナー 1章:核酸の構造と遺伝子発現(前半)

標準

担当:大林
参加者:18名
章の概要
DNA, RNA, タンパク質について,それらを構成する要素・情報伝達・制御方法を扱う.
議論
1. 「CAATボックスは一般にプロモーター効率の最強の決定要因」(p16)とあるが,そんなに重要ものが,なぜ4塩基と短いのか.
・重要であれば,出現頻度は低く,認識配列が長くなるのではないか.
 ・平均出現頻度:1 / 256塩基
 ・長過ぎると単体のタンパク質が認識できなくなる
  ・CAATボックスはどのように認識されるか
   ・ヘリカーゼか,認識タンパク質があるか?
   ・CAATはAT richなので解けやすいかも
2. GC対はAT対よりも結合強度が強く安定なのに,ゲノムのGC含量は概して低い.ゲノムの保存性の観点から矛盾してないか.
・安定であることの問題点
 ・GC richだと1本鎖になったときに,ベタベタと2次構造を作りやすい.
 ・1本鎖にするエネルギーが高くなるので,複製が難しい.
・物理化学的性質
 ・mCpG は TpG に変異しやすいので,GC含量が下がる
他の議論点
・DNA複製
 ・複製起点はどのように決まるか
 ・リーディング鎖とラギング鎖のエラー率,速度の比較
 ・DNAとRNAの合成速度はどの程度異なるか
・ゲノム
 ・ゲノムにはなぜ大量の儀遺伝子が存在するか
 ・生存戦略としての1本鎖ゲノムと2本鎖ゲノムの違い
 ・センス鎖の1本鎖DNAをゲノムに持つウイルスは無駄が多いのでは
・タンパク質
 ・アミノ酸以外の物質(プロリンのようなイミノ酸など)でタンパク質様化合物を合成できるか
 ・難溶性タンパク質の結晶化方法
・他
 ・cis配列の位置特異性はどのように決まっているか
 ・分子間結合の種類と役割の関係
 ・リボソームにはrRNAが大量に含まれているが,RNA worldは可能なのか
 ・ヌクレオチド = ヌクレオシド+リン酸 小分子化合物の命名法はどうなってる?

まとめ
ゲノムを考える場合には,情報科学的な特徴と物理化学的な性質の両面から考察する必要があり,実際今回の2つの議論点のどちらにも,その二面性が登場しました.

MBCセミナー20-1: がんに見る微視的進化過程

標準

担当:藤原
参加者:7名

節の概要:
がんの発生を変異と自然選択の原理に従った進化の過程として捉えた上で、がんの発生の要因やがん細胞の増殖・転移について述べている。

議論点:
がんの発生の要因として塩基配列の変異とエピジェネティックな変化があるが、どちらがより影響力があるのか。
 ▷ 塩基配列の変異
  - 5個以上の遺伝子に影響する可能性は低そう
   > がんの発生には5個以上の遺伝子の変異が必要だと言われている
   > サイレント変異や、元と同じような性質を持つタンパク質に翻訳される変異の存在
 ▷ エピジェネティックな変化
  - 5個以上の遺伝子に影響を与える可能性は高そう
   > がんの発生には5個以上の遺伝子の変異が必要だと言われている
   > ヘテロクロマチンの存在
  - 塩基配列に対する依存性・特性がありそう
  - エピジェネティックな変化のみでがんは発生しうるか

ほかの議論点:
・がん細胞は転移時(血液中を移動するとき)に、生体の防御機構をどうやって無効化するのか。
・がん細胞の増殖・転移が、最終的にどのように生物の死につながるのか。
・がんを早期(例えばがん細胞数が10〜100個のとき)に発見する方法はないのか。
・エピジェネティックな変化がどのようにがんに関連するのか。

MBCセミナー 11-2: 輸送体と能動膜輸送

標準

担当: 田高
参加者: 7名

節の概要
11-1では膜輸送を行うものとして輸送体とチャネルが挙げられていたが、この節では輸送体に着目しその機能などを述べる。
議論点
1. 細菌ではH+の電気化学的勾配を駆動力として輸送を行う輸送体が多いのに対し、動物細胞ではNa+勾配を使うものが多い。動物細胞でNa+勾配を使う利点は何か?
・細菌にはNa+-K+ポンプがあるのか?
・生物は元をたどれば海から来たため、外にあるNa+を使うのは自然?
 ・Na+のようにシンプルなイオンの利用は多い?
 ・K+は使うために貯めないとならない
  ・これらの理由からNa+を使うのは妥当
  ・議論点の整理:最近でH+勾配を使うのはなぜか?
・H+を使う理由
 ・環境依存性?
  ・火口や胃の中などでは使わざるをえない?
  ・初期の地球は酸性でそれを活用していた?
 ・酸化・還元との相性が良い
 ・水は必ずあるからH+は必ず使える?
  ・アルカリ性でしか生きられない細菌は?
   ・高アルカリ性細菌: 栄養分取り込みにNa+を使っている
2. 多剤耐性タンパク(multidrug resistance protein; MDR protein)が化学構造に無関係に耐性を示すメカニズム
・MDR
 ・膜に浮かんでいる怪しいものを搬出している
  ・ステロイドホルモン?
  ・多少は特異性があるかもしれない(極性など)
3. 真核生物で取り込みを行うABC輸送体が無い理由
・議論点の整理:ATPを利用するものと電気化学的勾配を利用するものの違い
 ・考えられる違い
  ・ATP利用型: ATPが拡散してこないと動けない、遅いのでは?
  ・勾配利用型: 勾配はいつでもある?、速いのでは?
 ・教科書ではグラム陰性菌のABC輸送体の例が挙げられていたが、グラム陽性菌で取り込みを行うABC輸送体は無いのか?
他に挙げられた議論点
・細胞外ではNa+が多く、細胞内ではK+が多い理由
・Na+-K+ポンプは陽イオン3個を細胞外に運び出し2個を取り込むが、もっと多く交換する事はできないのか?
・ゲノムサイズとABC輸送体数の関係性

MBCセミナー8-5: 遺伝子の発現と機能の解析

標準

担当:藤原

参加者:10名
節の概要:
遺伝子の発現とタンパク質の機能の関係を解析するときに、「古典遺伝学」と「逆遺伝学」という2つの考え方がある。
「古典遺伝学」では、ランダムに得られた変異体における機能欠損・機能獲得の様子を観察することで、その原因となる遺伝子を同定する。
「逆遺伝学」では、改変遺伝子を導入することで所望の変異体を作成し、その遺伝子がおよぼす機能を同定する。
議論した点:
ヒトという種は、10万年前のアフリカの種族から3,000〜4,000世代だけ離れた子孫であると考えられているが、この「3,000〜4,000世代」というのはどうやって決めたのか。
 ▷ 各年代におけるヒトの寿命を推定した?
  - 化石から推定
  - 現代のヒトのゲノムから推定
 ▷ そもそも、ヒトという種の起源を10万年前とした根拠は?
  - 地理的要因(アフリカから脱出した)
  - 気候的要因(氷河期が訪れた)
  - 生殖隔離(分化した種間での生殖が不可能であること)
  - 現代では、ゲノム上の相違度をもとに「種」というものを定義している(できる?)らしい
 ▷ ヒトとチンパンジーが分かれたのは600万年前
ほかの議論点:
・細胞集団内での遺伝子発現量のばらつき (Fig. 8-75)
・ヒトに対する遺伝学実験の倫理問題(問題のおよぶ範囲)
・遺伝子導入マウス作成の技術進歩
・ヘリカーゼの働き (Fig. 8-66)
・プロモータにより発現量が決定されている遺伝子
・改変遺伝子の導入時にマイクロピペットなどの道具を使うことで生じる影響
・マイクロアレイの欠点
・ヒトでの遺伝子変異がその行動に影響をおよぼす例 (Fig. 8-54)