参加者:14名
教科書:ヒトの分子遺伝学
担当:藤原脩
参加者:16名
教科書:ヒトの分子遺伝学
節の概要:
<2.4節>ヒトの染色体に着目し、染色体の染色方法とそれを利用した解析について述べられている。
<2.5節>染色体の数的異常・構造異常とそれが身体におよぼす医学的な影響について述べられている。
議論点:
・ヒトについて、染色体数が2n(46本)の卵子から個体ができないのはなぜか
- 染色体2nの卵子から分裂は可能だが奇形となる
- 下等生物(アブラムシ,ミジンコ)はクローンをつくる(卵子からかはわからない)
- クローンでは遺伝的多様性は期待できない
- 通常は無性生殖だが、越冬時には有性生殖を行う
➡ ヒトにとっては有性生殖がとくに重要?
- ゲノムインプリンティングがおよぼす影響が強い?
※ ゲノムインプリンティング = ゲノム刷り込み;遺伝的転写調節。父親と母親のどちらから受け継いだ遺伝子かという情報が記録されていること
・トランスジェンダーと性染色体に関係はあるか
- 仮説として
- 男性(XY染色体をもつヒト)の場合、Y染色体の不活化により女性だと性自認する?
- 女性(XX染色体をもつヒト)の場合、X染色体がY染色体の役割を担うことで男性だと性自認する?
- テストステロンに着目して
※ テストステロン = 男性ホルモンの一種。胎内で大量のテストステロンに曝された胎児が男性となるらしい(アンドロゲン・シャワー)
- テストステロンを作れない場合
➡ Y染色体(テストステロンの調節系)の異常と常染色体(テストステロンの合成系)の異常の両方が考えられる
- テストステロンを受容できない場合
➡ 性染色体だけでなく常染色体も受容するので、性染色体のみが関係しているとは断言できない
そのほかの議論点:
<染色体異常>
21番染色体のトリソミーだけが生存可能なのはなぜ(13, 18番染色体のトリソミーはある期間だけ生存可能で、ほかの染色体のトリソミーは生存不可能)
性染色体の増加では問題が起こらないのはなぜ(スーパー女性など。X染色体のモノソミーはターナー症候群を引き起こす)
13, 18, 21番染色体以外のトリソミーがある場合にはどれくらい成長できるのか
モザイク型(一部の細胞でのみ現れる)の染色体異常について、異常染色体が正常染色体へ変わることはないのか
<染色体全般>
染色体の種類によってセントロメアの位置が異なるのはなぜ
染色体の組み替えが必要なのはなぜ
サイズとセントロメアの位置による染色体の分類(P51, 表2.3)と含まれる遺伝子の機能に関係はあるか
まとめ:
セミナー前半の内容も含めて、ヒトとそれ以外の生物との違いを、染色体を通して考えるきっかけになったかと思います。
担当:城田松之
参加者:18名
真核生物ではRNAやタンパク質は転写・翻訳されたままの状態で使われるのではなく,様々な修飾を受けます.この点がセミナー参加者の興味を引きつけたようでした.特に,RNAスプライシングの機構にはたくさんの議論点が挙げられました.時間の都合上議論しきれなかったのが残念です.
一方,タンパク質の修飾については進化上の制約や機能の多様性の観点から利点がありそうだという方向にまとまりました.
まとめ
ゲノムを考える場合には,情報科学的な特徴と物理化学的な性質の両面から考察する必要があり,実際今回の2つの議論点のどちらにも,その二面性が登場しました.